『原典訳マハーバーラタ』

どうもNです。


ようやく月報が完成しました。おそらく明日にでも各学年に配られると思います。
予定よりかなり発行が遅れてしまいましたが、仕上がりはそれなりにいいと思うのでぜひ読んでみてください。


さて、今日からは、前から予告していたように月報に記事をブログに載せていきます。
第一回は「推薦図書20選」の中で最長の『原典訳マハーバーラタ』の紹介文です。
かなりの力作だと思うので最後まで読むべし。




『原典訳マハーバーラタ』上村勝彦 訳
ちくま学芸文庫
皆さんは叙事詩というものを御存知だろうか?
叙情詩?No.  ロマンス?No. バラッド?No.
まあ、有名所を突くならホメロスの「イリアス」「オデュッセイア」、ダンテの「神曲」、アイヌ民族の「ユーカラ」あたりである。その中でも「マハーバーラタ」こそ、世界最長として定評も高い叙事詩である。叙事詩はしばしば神話と抱き合わせにして語られてきたが、これもその例にもれず。「ラーマーヤナ」と並んでヒンドゥー教の事実上の聖典となっている。
マハーバーラタ」の粗筋をたどってみよう。時代はインダス文明期、場所はガンジス中流クル王国のインドラプラスタから始まる。この国の王パーンドゥは二人の妻から五人の彼に生き写しの王子を得たが、途中でバラモン僧の呪いにれる。代わって政務を執ったのが、盲目のドリタシトラ、妻からはドゥルヨーダナを筆頭とする百人の王子を得る。しかし、“王子”たるものの常で、五人の王子と百人の王子は仲が悪く、ドゥルヨーダナと叔父のシャクニはお互いに謀って王位を継承していた五人の王子の長男のユディティシラと賭けをする。このユディティシラは苦行などを積み、ヒンドゥー教から見たら理想の聖人だったのだが、いかんせん政治感覚は国王として十分ではなく、賭けでハメられてドゥルヨーダナにクル王国を全て持っていかれ、挙句に数年の間、誰にも見られずに暮らすべしと決めてしまう。雌伏の後、五人の王子は神々から授かった武器を手にマツヤのヴィラータ王などから兵を七軍団も糾合し、決戦の場へ。無論ドリタシトラも折角の王位を従兄にやってたまるかと十一の軍団を率いて決戦の場へ。
多少書きすぎましたが、この後の決戦の有様は筆者の筆舌に尽くし難いものがありますので本書をお読みください。しかし、この本は真剣に読もうとしたらたぶん脳がショートしてしまいます。何故ならこの本は主筋以上の量の挿話をどんどん吸収し、半ば物語の迷宮と化しているからです。ちょうど千一夜物語のような状況です。しかしこれはインド・アラビアの人々の共通の物語の特色なので、むしろ楽しんで読んだほうがいいようです。
この物語の挿話も、サンスクリット教本には必ず出てくる「ナラ王物語」、貞妻がついに夫を奪い返す「サーヴィトリー物語」、ヒンドゥー教の宗教的精神が凝縮された「バガヴァット・ギーター」、もう一つの叙事詩ラーマーヤナ」の要約の物語。これらの挿話を理解し、ヒンドゥー教の根本精神を学びながら物語を楽しんでみるのも良いのではないでしょうか。